046<屈辱のクジャ>
「姫様、見ましたか。今の杖は。」
「ええ。厄介な杖ね。あれを喰らったら最後。即失格ね。」
アリーナの姿を見つけて、幸運にもめぐり合えた。
二人であーでもない、こーでもないと話し合って時間を潰していた。
何とか飛び出そうとしていたアリーナを制して草地に紛れる。
どうやら危険性を理解できたようだ。
「いい案はないの?クリフト?」
「…杖を振るためには一呼吸いる、というところですか。」
クリフトの手には杖が握られている。それをアリーナに渡す。入れ替わりに何かの指輪を受け取る。
「そこに付け込むのね。」
「あまり好きではございませんが一回だけなら。相手の切り札であるあの杖を振らせる算段はあります。」
ふうと溜息をつく。
クジャは周囲を見回す…
周囲の風景に明らかに異物が混じっている。
帽子である。
見覚えがある。まだ若い、生真面目そうな青年が被っていたものだ。あまりの大きさに脳裏に焼きついていたのだ。
「…まだ、青いね。」
ゆっくりと帽子の元に近づく。静かに歩を進める。
振りかぶって…!
その刹那。ぐらりと帽子が揺れる。
「…!」
そして、それが倒れこんでくる。
地面に突き刺した枝とそれにかけてある神官帽子。
…囮か!そう気付くのに半呼吸もかからなかった。
しかし、勢いよく振られた杖は既に戻すことあたわず魔法弾は発射される。
帽子に魔法弾は命中し、杖へと変える。
そして半呼吸遅れてクリフトが別場所から飛び掛ってきた。
「…遅いね。」
別のところで身を伏せているアリーナもそう思ったことだろう。
一呼吸あれば体勢を立て直して──
クジャは冷静だった。
すぐに向き直って、再び杖を構える。
「考えたようだけど…これで、ジ・エンド、だね。」
再び杖に魔力が篭る。もう半呼吸あれば君はモノに変わる。
クリフトは丸腰だ。こちらに飛び込むにはもう一呼吸はかかる。
──魔法弾が発射される。
やった、そう思った瞬間。
まさにクリフトに魔法弾が当たるかという瞬間に魔法弾は霧消した。
「!!」
既にクリフトが間合いを詰めていた。
相手を掴み身動きを止める。
──もはや勝負はついた。
「大丈夫?クリフト?」
クジャは地に付していた。呪文を叩き込んだ後、魔法も呪文も打つ間もない格闘戦となった。
クジャには驕りがあった。まだ、勝てる、と。クリフトを引き剥がせば何とかなる、と。
しかし、それはクリフト一人であったらだ。すぐにアリーナも駆けつけ杖を振りかぶった。
動きが封じられたクジャには避ける術はなかった。
「はい、姫様。神が姫様に配給されたこの指輪のおかげで助かりました。」
クリフトの指には指輪が光っていた。「魔封じの指輪」だ。
素早さを代償にしてすべての魔法を防ぐ。これでモノカの杖を無効化したのだ。
「で、クリフト。この杖はどうしよう?」
地に伏したクジャからモノカの杖を拾い上げる。まだ、7回ほど使える。クジャは起き上がらない。
「誰かに拾われて悪用されないよう、ここで使い切ってしまいましょう。」
「草や木に使えばいいわけね。」
アリーナが適当な草木に対して杖を振る。
クリフトはクジャの荷物を確認して丁寧に地に付しているクジャの横へと置く。
(…この屈辱、晴らして見せますよ…)
クジャは意識はあった。が、金縛りで指先一つも動かせなかった。
アリーナの放った「金縛りの杖(残り回数3)」が命中、まさか自分がこのような醜態を晒すとは露にも思わなかっただろう。
自分が金縛りになんてあわないとは思っていたが、麻痺とは違うということを痛感されただけだ。
「終わったわ。もう使えないこの杖はどうしたらいい?」
とりあえず杖をあらかた振り終わったアリーナがアイテムを抱え込んでやってきた。
「…折ってしまいましょう。その上で川に捨てたほうがいいと思われます。」
それを聞くや否や自慢の怪力でモノカの杖をへし折り思いっきり川の中央に向かって放り投げた。南へ、南へと流されていくのを確認する。
そしてすべてが終わって二人はアリアハン方向へと足を動かした。
【アリーナ 所持品:金縛りの杖(残り3回)、『うみどりの爪、弟切草、パワーアップの巻物、力の指輪』
現在位置:アリアハン北の橋付近の森 行動方針:アリアハン城下町へ 願い:?】
【クリフト 所持品:魔封じの指輪、『万能の杖、不発の巻物、如意棒、ラウンドシールド』
現在位置:同上 行動方針:同上 願い:?】
※魔封じの指輪…鈍足になるが魔法を完全シャットアウト
※『』内部がモノカの杖によって得たアイテム。クリフトの帽子は無くなりました。
【クジャ(金縛り、マホトーン) 所持品:神秘の鎧、魔法のランプ 現在位置:同上 行動方針:回復を待ち、クリフト達を追う 願い:?】
※金縛り…打撃を喰らうなど体力が減ったり、もしくは話しかけられたり、時間はかかるが時間経過でも回復する。
※モノカの杖は回数が0になり湖のそこに沈みました。
047<協力>
ジージョ様を捜してもう何年になることだろう…。
似た人がいると聞いてはあっちへ行ったりこっちへ来たり。旅した距離は世界数周分に当たるだろう。
でも未だにジージョ様は見つからない。だから何年もだんな様のお屋敷には戻っていない。戻れるはずがない。
ああ、だんな様はお怒りだろうか、それとも未だに床に伏しておられるだろうか…。
とにかく、ご主人様をこれ以上の間心配させるわけにはいかない、そもそもわたしは…
「…んた!聞こえてるか?ちょっと手伝ってくんろ!」
考え事をしながら歩いていて気付かなかったが、どうやら誰かが呼んでいるらしい。
そちらを見ると、みすぼらしい格好をした男がおり、その近くに誰か一人倒れているのが分かった。
立っていた方の男は、この人を近くの村の宿屋に運ぶつもりらしい。
近づいてみて、私は驚いた。
「ル、ルドマン氏じゃないか!」
倒れていたのは紛れもなく、世界一の大富豪ルドマンだった。
「ええ!この人があのルドマンさんだか!」
男の方も驚いていた。まあ何度かだんな様と共にサラボナへ行った自分は知っていても
一般には顔は知られていないということか。
とにかく、レーベとかいう村に彼を運ぶことにした。重かった。
途中で少し休憩し、色々と聞いてみることにした。
「何で優勝者は一人しかできないのに、ルドマン氏を運ぼうとしたんです?」
「そりゃあ、オラんとこの村掟にはよそ者にも親切に、っていうのがあるからな。
村長であるオラが率先して行動せんといかんだろ?
ああ、紹介がまだだったな。オラはカボチ村ってとこの村長やってるサーフってもんだ。
オラの村は貧しいんで、今改革してるところなんだが、資金が足りなくてな。
まあでも、いいもんが支給されたもんで未来は明るいだよ」
そういって、彼は何冊か本を取り出す。政治には役立つかもしれないが、このゲームに関しては、ハズレアイテム。
『よい 村長となるには』『よくわかる 村長学入門』『村人の心をつかむ10の方法』『村長ポエム集』などなど。
「私はクラウドというものです。ある富豪の召使いをしています」
「ああ、だからこの人を知ってたのか。オラんとこもぐろ〜ばる化を目指してるんだがなあ…」
グローバルという明らかに不似合いな言葉に苦笑したが、一番聞きたかったことを聞いてみる。
「ところで、このゲームで優勝する自信はありますかな?」
「あんまりないが、頑張るつもりだよ」
「そこでどうですか、協力しませんか?私とあなたとルドマン氏とで」
「そんなことしても、結局最後は奪い合いになるんじゃないか?」
「確かにもっともなことです。 ただ、ルドマン氏は非常に気前が良い人物だと聞いています。きっと謝礼をしてくれるでしょう」
「なるほどな、よし、分かった。3人で協力しよう」
「それにしても、…彼、重いですなぁ」
「いや、まったくだよ…」
【クラウド 現在位置:同上 所持品:?
行動方針:ルドマンをレーベ村へ、3人で協力してキーアイテム探し 願い:ジージョを屋敷に連れ戻す(もう戻っているのは知らない)】
【サーフ(カボチ村村長) 現在位置:同上 所持品:現代レブレサック村長の本 行動方針:同上 願い:カボチ村改革資金を手に入れる】
【ルドマン(気絶) 現在位置:レーベ北の平地 所持品:? 行動方針:気絶中 願い:サトチーとフローラのケコーン(重婚上等)】
※ルドマンに対する目的は、サーフは資金援助、クラウドはルドマンの情報網利用です。
048<ナジミの塔最上階にて>
「何だ、はいれるじゃない。」
漸くナジミの塔最上階に辿り着いたヒルダとシドーは塔の周囲をゆっくりと旋回していた。
(無茶ヲ言ウナ、横ハ兎モ角縦二狭スギル。)
「入れない事は無いと思うけど?」
ナジミの塔の最上階は、何故か一切の外壁が存在しない。
(這イ進ムノガ精一杯ダ、之デハ思ワヌ不覚ヲ取ル事モアロウ)
「壊せば?」
(塔ヲ壊シテ中二誰カ居レバ失格トナロウ、
ソレニオイソレト壊セルナラゴール前ノ洞窟ヲ埋メレバ我ノ後ニゴール可能ナ者ハ居ルマイ。)
「OK、3時間したらここに戻ってきて。」
それだけ言ってヒルダは邪神の背から飛び降りた。そして
「だれじゃ?」
最上階唯一の扉が開いた。
【ヒルダ 現在位置:ナジミの塔最上階 所持品:ロトの剣、リピーティング・クロスボウ 願い:?】
【シドー 現在位置:ナジミの塔最上階周囲 所持品:無し 行動方針:ロト一族?の妨害 願い:自身のパワーアップ】
【ドーガ 現在位置:ナジミの塔最上階の小部屋 所持品:?、盗賊の鍵 行動方針:? 願い:ザンデの魂を無から救い出し、和解】
049<知りたい>
エドガーは興味深そうにそれを眺める。
考えてみればオートボウガンだの、ブラストボイスだの、サンビームだの戦いのための機械が大量に作られていたフィガロにとって
目の前の支給品、からくり掃除機は興味深い一品であった。
とんでもなく重いのは改善すべき点ではあるが屋外にての清掃もこなせ、なによりこの説明書には特殊な装置で半永久的に働き続ける。とある。
もちろん酷使していけばいつかは壊れるときが来るのだろうけど整備をしっかり行うことができれば永久的に働くことができるということだろう。
外見で見る限りは自分たちのよく知る機械に比べれば単純な部類に入る。
だが、半永久的に動くという動力というものがある。それが何なのか。
是非とも知りたい。
…が、エドガーには問題があった。
運悪く外へ出る唯一の扉がうんともすんとも言わない鉄格子が自分のスタート地点じゃあ、どう考えても望み薄だろう。
わかっているのはここが地下であろうということ。
「…ロックかマッシュがいれば大丈夫なんじゃないかとは思うが、運良くここへ来るとは限らんだろうしな。」
せめて何か掘るものがあれば脱出を試みるんだが。
解体をする時間を稼ぐためこのステージを突破しないといけない。
「仕方ない。まずは床板をはがすほかあるまい。」
──気が遠くなりそうだがやるしかない。
【エドガー 現在位置:アリアハン牢屋内部 所持品:からくり掃除機 行動方針:床をはがし穴を掘って脱出 願い:からくり掃除機の原動力を知りたい】
050<相変わらず踊り状態>
┃∀゚ ) アヒャ
┃⊂←パルマー
┃ ヽ
♪ 誰か止めてくれでござるー
♪ / ヽ ランタ タン
ヽ(´Д`;)ノ ランタ タン
( へ) ランタ ランタ ←メルビン
く タン
止めてくれるんじゃないのでござるかー ☆
♪ / ヽ /
ヽ(´Д`;)ノ (゚∀゚´)_ オケツフリフリ!
( へ) ヽ( )) 彡 −☆
く / ヽ
♪ / ヽ
ヽ(´Д`;)ノヽ(゚∀゚´)ノ ランタ タン
( へ) ( へ) ランタ タン
く く ランタ ランタ タン
♪
♪ / \ ランタ ランタ
ヽ(;´Д`)ノヽ(..゚∀゚)ノ ランタ タン
(へ ) (へ ) ランタ タンタ
> > タン
【メルビン(踊り状態) 現在位置:レーベの村魔法の玉があった家一階 所持品:踊りの石像
行動方針:服を着て踊りの石像の効果が届かない場所へ 願い:邪悪なものの優勝の阻止】
【パルマー(踊り状態) 現在位置:同上 所持品:? 行動方針:? 願い:?】
051<気合い一閃>
「…バトラー、大丈夫か?」
「…ああ、お前のベホマのお陰で何とかな」
バトラーとピエール。空高く打ち上げられた二人は、湖に見事に着水していた。
どうにかこうにか岸にたどりついた二人は、ピエールの回復呪文で傷を治すと
性懲りもなく今後の計画について話し合っていた。
「まさかあの至近距離でイオナズンを返されるとはな…。呪文返しには注意せねば」
「ああ、俺様にしては迂闊だったな、今度は確実に……おっと、次の獲物が来たようだぜ?相棒よ」
ピエールが振り向くと、砂煙を立てて走ってくる人間が一人。どうやら丸腰どころか半裸のようだ。
「俺が正面で引きつけるから、ピエール、お前が裏から回り込んで仕留めてくれ」
「…承知した、では頼んだぞ!」
「はあっ!」
ピエールのアイスブランドがむなしく空を斬る。魔物コンビは丸腰の人間、オルテガに苦戦を強いられていた。
バトラーが気を引いている間に、背後からピエールが攻撃する。その作戦自体は間違いでは無かった。
ただ一つ、喧嘩を売る相手を間違えたこと以外は。
「くっ、この変態野郎、何で俺達の攻撃が当たらないんだ?」
バトラーとピエールの繰り出す連続攻撃の雨を、オルテガは涼しい顔で回避する。
「変態とは心外だな…。貴様達にはまだ本物の美というものが分かっていないようだな…」
しかしその姿は誰がどう見ても変態仮面である。
「一ついいことを教えてやろう。誰しも、強力な鎧を身につけることによって、無意識のうちに
その防御力に頼り回避行動がおろそかになってしまうのだよ…。だが」
「だが…?」
「……だが鎧を脱ぎ捨て、覚悟を決めたとき、全ての攻撃を紙一重で回避する極意に目覚めたのだよ!」
「ちっ、しかしこいつはかわせまい!」
バトラーはイオナズンを唱えた。最高威力の爆発がオルテガを襲う。
「はあああぁぁ……むん!」
オルテガの放った気合いによって爆発は相殺される。だが。
「この勝負、もらったあ!」
爆風の中からピエールが飛び出した。彼の剣は、確かに無防備な男の右胸を捉えた──
ガッ!
冷たく光る刀身は、オルテガの胸板に傷一つつけることなく止められていた。
すかさず攻撃を受け吹っ飛ばされるピエール。
「ぐはあっ」
「何故だ!何故今のピエールの攻撃が効かない!」
「ふっ…。我が極限まで鍛えられた漢の闘気によって強化された肉体は、オリハルコンにも匹敵する強度を得るのだよ!
よって、貴様達の曇った剣では傷つけることも不可能!」
オルテガがゆっくりと近づいてくる。だが二人はその気合いに圧倒され動くこともできない。
「愛を忘れた獣たちよ…。ゆっくりと頭を冷やすがよい…はあっ!」
気合い一閃。バトラーたちは再びお空の星となった。
「ぐはあああああ」
「またかー!またなのか!」
「さらばだ、哀れな子羊たちよ…。これは頂いておくぞ」
近くに落ちていたアイスブランドを腰に下げ、変態仮面は再び走り出した。世界中を愛で埋め尽くすために。
【オルテガ(荒くれモード) 現在位置:アリアハン北の橋手前 所持品:覆面、アイスブランド
行動方針:レーベ経由でゴールへ向かう 願い:世界中を愛で埋め尽くす】
【バトラー 現在位置:空中 所持品:? 行動方針:PK 願い:?】
【ピエール 現在位置:空中 所持品:無し 行動方針:PK 願い:?】
052<イオナズン>
アイリンは走っていた。
さっきまで「らちかんきん」スタイルだったのに、走っていた。
どうやら、爆発の熱で拘束が解けたらしい。
「とにかく…助かった……」
そう呟きながら、アイリンは片っ端から物を拾っていく。
袋の中には沢山の物が詰まっていた。
「これだけあれば……キーアイテムもあるはず!」
その数分前。。。
「くっそ!」
セージは非常に困っていた。
正直森を選んだ自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる程だ。
「こんな木が密集してる場所で動けるかっていう話だよね…」
やけに説明くさい科白に便乗して解説しよう。セージは先程木の上で辺りを見回していた。
"まぁ、高いところから怪しいものが見つかるかもしれないし"という理由からだった。
だが、一向に怪しいものは見つからず、そろそろ移動しようと思ったときだった。
何を思ったか、木から木に飛び移ろうとジャンプした時……落ちてしまったのだ。
木の枝やなんやらが密集している場に、何故か、偶然(魔女の宅急便のあのシーンの状態)。
「しょうがない、いっそやってしまおうか」
そう言うと、彼は扇子を短い魔法の杖のようにくるくると回す。こうでもしないと割に合わないらしい。
そして、彼の唱えた呪文とは…。
「イ オ ナ ズ ン 」
今日、森の一部分に拙宅な出来のミステリーサークルが出来上がった。
「もういい…やめた。村に行こう、村に。あっちの方が絶対平和だ。
それに誰か人がいないと寂しいしね…心強い人を探そう」
彼はそう言うとレーベの村の方角に走り出した。よっぽど森が嫌いになったらしい。
因みに、諸君も知るようにレーベ村では恐ろしい珍事が起こっている。
彼はまた、見余った。
【セージ 現在位置:森へと繋がる道 所持品:扇子 行動方針:レーベに行き、キーアイテム入手&一緒に同行してくれそうな人を探す
願い:願い:この世界(DQ)と異世界(FF)に存在する全ての呪文を習得する】
【アイリン 現在位置:森内部 所持品:無し 行動方針:遅れによる差を縮めるため、かたっぱしからアイテムを拾う 願い:?】
053<どんな手段を使っても>
アイスブランドを携え走るオルテガ。レーベはもうすぐだ。
「ぬわっ!」
オルテガは足元に仕掛けられたワイヤートラップに引っかかり、無残にも転んでしまった。
「全く…。誰だ、こんな罠をしか…」
途中まで言って気付いた。自分の腹に深々と刺さったアイスブランドに。
蒼い刀身は真紅に染められ、惜しみなく血液が流れ出す。
傷口は凍傷になっているせいもあり、回復呪文は用を成さなかった。
やがてオルテガの意識は遠のき、その場に倒れ臥す。
その様子を木影から見つめる一人の影・ワル坊はただ笑っていた。
【オルテガ(気絶。危険状態) 現在位置:レーベ南西 所持品:覆面 行動方針:? 願い:世界中を愛で埋め尽くす】
【ワル坊 現在位置:レーベ南西 所持品:ワイヤートラップ(残り4本) 行動方針:どんな手段を使っても生き残る 願い:?】
※アイスブランドはオルテガに刺さってます。
054<いたずらもぐらの一種>
「どうなっているんだ?この洞窟は?」
スコール(キラースコップ)はいざないの洞窟の一階にいた。
しかし出口が無い。モグラとしての本能で、向こう側に部屋があるのは分かる。しかし壁がある。
明らかに人工の洞窟なのだが、ここで外と完全に遮断されている。
何かを封印しているのだろうか?まあ今はどうでもいいことなのだが。
「仕方がない、久しぶりだが、掘るとするか」
自分には壁を掘るのに最適な黄金のつるはしがある。つるはしを振るうのは初めてだが、すぐに掘り終わるだろう。
カーン カーン カーン カーン ガキッ…
壁は思いの外固かった。モグラとはいえ、こういうことには慣れていないため、かなりしんどい。
が、何故か安心する。興奮する。戦いを求めるキラースコップといえども、やはりいたずらもぐらの一種なのである。
「チッ、これではイズモンのヤツを笑えないな…」
そんなことを考えながら、スコールは壁を掘る。その姿はとてもよく似合っていた。
【スコール 所持品:黄金の鶴嘴 現在位置:いざないの洞窟地下一階 行動方針:石壁を掘る 願い:?】
055<リックの呟き>
「もう一度だけ聞こう…。儂と手を組まぬか?
ミルドラース様がこの世界を支配した暁には、貴様にも魔王軍の幹部としての立場を与えようではないか」
レーベの西、海に面した森の橋で二人の男が対峙していた。
イブールとルビカンテ。ともに今回の参加者の中では、抜け出た実力の持ち主である。
「何度聞かれても答えは同じだ、お前と組む気は無い」
そう答えるルビカンテに対し、イブールは嘆くように呟く。
「そうか、それは残念だ。…ならば、邪魔になりそうな貴様には、ここで退場してもらおうか!」
イブールはそう言い終わると同時に、冷たく輝く息を放った。強烈な冷気が辺り一面を白銀の世界へと変える。
だが吹雪はルビカンテの手前で彼の支給品、炎のマントによって阻まれた。
「どうした?私を倒すのでは無かったのか?」
「くくくっ……、そうでなくては面白くない。本気で行かせてもらうぞ……」
両雄の激しい戦いを近くの樹上から見下ろしながら、ボンモール王子リックは呟く。
「…モニカ、僕は君の所へ無事に帰りたいよ…。」
【イブール 所持品:? 現在位置:レーベの西の森海岸線 行動方針:ルビカンテを倒す 願い:ミルドラースの世界征服】
【ルビカンテ 所持品:炎のマント 現在位置:レーベの西の森海岸線 行動方針:イブールを倒す 願い:?】
【リック王子 所持品:? 現在位置:レーベの西の森海岸線、樹上 行動方針:無事に帰りたい 願い:?】
056<大好物>
いざないの洞窟の湖付近。
マッシュは上機嫌だった。
デイバッグの中に妙に細かいモノがたくさん入っていると思ったがどうやら木の実の類であった。100や200の数ではない。
デイバック丸々一つに詰め込んだ節のあるそれは一体いくつあるというのか
それも大好物の胡桃に似たものである。
何日もかかるレースの中では食料は普通にありがたいが自分の好物というとなるとやはり自然と笑みがこぼれてくる。
殻を握りつぶし実を食べる。
うまい、胡桃に似ているが違う。
体の中から力がわいてくるようなこの感覚。病み付きになりそうだ。
「よしっ!それじゃあ、まずは兄貴を探そうか。」
気力十分、やる気十分。
…そりゃそうだ。彼の食べている胡桃と思しき物。
実は「命の木の実」なのだから。
【マッシュ 現在位置:いざないの洞窟付近の湖 所持品:命の木の実996個(説明書埋没 4個食べた)
行動方針:エドガー捜索 レーベの村へ 願い:?】
057<いたずら王子、カメハ>
「ちぇっ、ワルぼうのやつ、どこ行ったんだ?
せっかく色々とやってもらおうと思ったのにさ」
健康的に焼けた肌をした少年。
いの一番に出発した少年。
いたずら王子として国中で評判になっている少年。
カメハ王子である。
彼はいま、いざないの洞窟にいる。
複雑な造りをしていて、なおかつ暗いため、なかなか進めないのだ。
それだけに、罠をしかけるのには最高の場所ではないかとも思う。でも、道具が無い。
支給品は重い壷だ。といっても、デイパックに入れると何故かそれほどの重さは感じないのだが。
閉じこめの壷といって、この中にはどんな敵でも閉じこめることができるらしい。大当たりだ。
ただ、一度しかつかえない。
「あ〜あ、どうせなら、ロープか何かあったら良かったのになぁ」
とりあえず、洞窟にあったたいまつは手に入れたのだが、それでも暗いし、道も覚えきれない。
と、そこへ、何やら音が聞こえてきた。
カーン カーン カーン カーン…
何の音かは分からないが、その方向に誰かいるだろうし、もしかしたら出られるかもしれない。
音を頼りに、カメハはその方向へ駆けていった。
【カメハ 所持品:閉じこめの壷、たいまつ(洞窟の壁から) 現在位置:いざないの洞窟地下二階
行動方針:洞窟を抜け、いたずら用の道具を探す 願い:優勝して100億年分のお菓子をもらう】
058<怖いのは>
ガタガタ震えていたギルバートだがふと目に入った光景がある。
そう、ソロともょもと、そして血の海に沈んでいるピサロだ。
ピサロの失血量がすごい。そして今まさにもょもとに剣を振り下ろさんとしているソロがいる。
怖い、怖い、怖い。
たとえ、殺しがルール違反であるとは言ってもルールを破ろうとする人はいることは明白だ。
怖い、怖い、怖い。
ここでもし死んだら、どうなるのだろう。
夢を持ってここに挑んできた人々が無慈悲な狂気の刃によって殺されていくということはどういうことか。
怖い、怖い、怖い。
怖いのは何か?
死ぬことが怖い?それもそうだが。
…神の元に監視されていたとしても人を殺めることができる、その狂気。
手に持つ、チキンナイフに力が宿った。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
思わずソロもその手を、没頭していたもょもとも手を止める。
「わ、な、なんだ!」
もょもとが思わず叫ぶ。そのとき異変に気づく。
ギルバートの視線はこちらにない。
そしてあるはずの気配が薄い。ピサロは…?
「!」
ソロのアルテマウェポンが鼻の頭を掠める。
「手元が狂ったか…」
「て、てめぇ!」
机の下を潜る。ソロは机を真っ二つにした。
距離をとるだろうとソロは思った。
が、実際は違った。
机の近くにやってきたのを見計らってソロの足元のほうへ再び突っ込んでいった。
足を払い体勢を崩す。
そしてソロと視線が合う。
──こいつ、狂ってやがる。
ぞっとして渾身の蹴りを見舞う。
間合いを取ることができた。普通のやつならしばらくは起き上がれられないだろう…が。
そこにギルバートが覆いかぶさる。
「に、逃げてください!」
「お、おい!」
「時間稼ぎにはなると思います!早く!」
勝ち残ることは万に一つも無理だ。
…なら。
勇気を出す、逃げてきたばかりの人生に決別する。
「すまん!」
もょもとはピサロを担ぎ上げて最短距離、窓から外へと出る。
「イオラ!」
ソロはギルバートを呪文で引き剥がし舌打ちをした。
ピサロを確実に殺せた。それだけに惜しい。
もはやルール違反など知ったことかという殺気。
ギリリとギルバートを睨めつける。
ううと呻きギルバートが立ち上がる。まだ、チキンナイフは光を失っていない。
明らかにこの状況に恐怖している。しかし、勇気を持って今この状況に挑んでいる。
血がぽたぽたと落ちる。死ななかったのが奇跡というべきか。
ちょうどそこに図書館に入る影が。
「…!助太刀するぞ!」
シドルファス・オルランドゥ伯。剣聖と呼ばれた男。
状況を一瞬で理解し、銅の剣を抜く。
ソロ、ギルバート、シド。それぞれが三角形を描くように陣取った。
【ソロ 現在位置:図書館 所持品:アルテマウェポン 行動方針:ピサロを殺す 願い:ピサロの完全抹殺 】
【ギルバート 現在位置:図書館 所持品:チキンナイフ 行動方針:時間稼ぎ 願い:アンナにもう一度会う】
【シド(FFT) 現在位置:図書館 所持品:銅の剣 行動方針:ギルバートの手助け 願い:特になし】
【もょもと 現在位置:図書館→城下町へ 所持品:鋼の○金術師7巻まで、コンドーム50個 行動方針:ピサロの治療 願い:?】
【ピサロ(重症) 現在位置:図書館→城下町へ 所持品:なし 行動方針:気絶中 願い:?】
059<約束を果たすとき>
最初の場所にあいつら、いたな。
ゴツい体格をしたモヒカン男、たまねぎマンのような髪型をした少女、そして、青いツンツンした髪の男。
覚えている外見的特徴はほとんど髪型だな…まあいい。確か、ハッサン、バーバラ、エニクスといったか。
あの青い服を着た男がいないのは残念だが、あいつはまた今度だ。
1体1で戦ってオレに打ち勝ったのはテリー、エニクス、この二人だけだ。
あれからかなりの月日が流れ、あいつらが魔王を倒したとかいうウワサも流れている。
だが、オレだって何もしないで毎日を過ごしていたわけじゃねえ。
来る日も来る日も鍛錬に明け暮れた。あの時よりもずっと強くなっているはずだ。
オレの願いはあいつらともう一度戦って勝つことだ。
このチャンスを逃したら、もう二度とあいつとは戦えないだろうな。
大国レイドックの王子ともなるとそう簡単に会えるものじゃねえ。
今こそが、約束を果たすときだ。
ムスコよ、父さんは、絶対勝つからな。
…もしレースに優勝したらあいつが欲しがってた冒険譚でももらうとするか。確か全130巻だったかな。
【ブラスト 現在位置:ナジミの塔地下一階の宿屋 所持品:?
行動方針:二人分の武器(同じ武器)の調達→エニクスを探す 願い:エニクスと戦い、勝つ(息子へのプレゼント)】
060<病>
なんで、私が選ばれたんだろ。
アリアハンの井戸のそこでぜーぜーと胸を押さえつける美女がいた。ネリスである。
心臓に病──すぐに息が上がってしまい、多くの休養を必要とする──があるため井戸から出るだけだというのになかなか出られない。。
剣や、呪文には常人より自信はあるのだけれども…
持久力がなければ勝ち抜くことは絶対に無理。井戸から出られないとなると既に絶望的。
すぐにレースを降りようかと思った。
神も参加しているというのに。どうして、私のような病気持ちが勝とうと思えるのだろうか。
願いはないわけではないのだけど──
とりあえず井戸のそこにある家にあった火打石で家の中のものを適当に燃やして狼煙を上げてみることにした。
そして火が消えないよう適度に何かを燃やし続けた。
【ネリス 現在位置:アリアハン井戸内部 所持品:青龍偃月刀 行動方針:救助待ち 願い:心臓の病気を治す】
※心臓の病はデフォルト。体力の消耗が激しい
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