031<アグリアスの災難>

聖騎士アグリアス。
突如世界にあらわれて、地面に着地する瞬間、嫌な感覚が脳髄を駆けめぐったのを憶えている。
「なんという災難……」
アグリアスは脚を捻挫してしまった。
立とうとすると激痛がはしる。
「参ったな」

まいったな、か。
ここで降参、か?
たしかに歩くこともロクにできないようではそれしかないだろうな。
アグリアスは自分で自分を言いくるめようとし、油汗を流しながら時が経つのを待った。



バトラーとピエール。
二人は腕をならし、肩をいからせてアグリアスに近づいてくる。
彼らは欲望たぎるマラソン大会に出場したことで、本来の魔性を取り戻してしまったようだ。
「人間がいたな。他に誰もいないようなので……スクラップにしてやるか」
「サトチー様がこれを知ったらなんと言われるだろうか。私は悲しい」



アグリアスは邪悪な予感に鳥肌が立つ。
……悲しいのはこちらのほうだ。何故こんなときに脚が動かない。
油汗が冷や汗に変わる。手持ちの武器は無い。
良い様になぶられて足蹴にされて心の無い人形になって最期は瓦礫のなかに埋もれていく自分。
それがもうすぐ現実のものとなる。
受け入れなければならない運命である。だがせめて。
アグリアスは亀のように身を閉じ固め、せめてもの抵抗の形として、模様の無いマントを翻してみせた。

バトラーは至近距離でイオナズンを唱えた。ぱっと明るい太陽が視界のなかで燃え上がった。
「オヴェリア様……」
アグリアスはどうしてもそれが口から出てきてしまう。
やはり、オヴェリア様か……その名を出すことでしか、私はもう存在意義を見い出せない。

爆発は跳ね返り、バトラーたちを襲った。
「ぐふっ」
「なんですと!?」
バトラーとピエールは空高く弾き飛ばされた。

遠い星になっていく打ち上げられた二つの花火を見てアグリアスは頭を痛めた。
今の光景をどうにか現実性帯びたものと見る努力をしようと思ってはみたが、それは無意味なことに
感じられた。
「……そうだ、これは夢か」
アグリアスは目を閉じた。

【アグリアス 現在位置:アリアハン北の橋近辺 所持品:ヒラリマント 行動方針:動けるまで待機 願い:?】
【バトラー 現在位置:空中 所持品:? 行動方針:PK  願い:?】
【ピエール 現在位置:空中 所持品:? 行動方針:PK  願い:?】





032<踊りの石像>

レーベの村、民家一階。
何かの実験をしていたのだろう。その部屋に人影が一人。
メルビンである。
一体、我が神は何を目的としている?
だが、神の配下である──英雄、メルビンの腹は決まっていた。
「しかしそれにしては引っかかるでござるな。」
そう、本来は敵であるオルゴ・デミーラの存在だ。
神と手を組んだとして、何をやるつもりだろうか。
「なんにしよ邪なる者たちに優勝を許させてはならないでござるな。」
最上は自分が優勝。
そうでなくとも味方──マリベルとか─他の勇者たちが優勝すればいい。
もちろん、無害そうな人が優勝してもいい。
…メルビンの頭の中にセフィロスの姿がよぎった。
明らかに危険だ。
「まずは、ここを上位で通過して様子を見るでござるか。」
足腰は弱くはなってはいるがまだまだ若い者たちには負けられない。
支給されたデイバッグを開ける!その刹那──!

ちゃっちゃかちゃっかちゃっちゃかちゃっか

突如メルビンにスポットライトが照らされた!
「な、な、何でござる〜!」
それと同時にメルビンが踊りだした!踊りたくって踊っているわけではない!
「体が勝手に踊ってしまうでござる〜!」
いつの間にかメルビンはステテコパンツ一丁になってステテコダンスを踊り始めた!
──支給されたのは「踊りの石像」。部屋内に置くと誰であろうと強制的に踊りを踊らせる恐るべき石像である。

取説
「部屋に限ってのみ効果を発揮します。」

この家の一階は一つの部屋だけである。
踊りから逃れるにはこの部屋から出ればいいわけだがクルクル踊りながら階段を上ったりドアを開けることはできない。
その上外に出たとしてもステテコパンツ一丁だ。
変態だ、変態だ。ただの変態だ。
今現在外に変態の一人であるメモリアリーフの主人がメイドを追い掛け回している。
今出たらおめでとう、変態が増えました。

…メルビンは一人孤独にステテコ姿で踊り続けていた。
メルビンはある意味、史上最大の危機に晒されていた。

【メルビン(踊り状態) 支給品:踊りの石像 行動方針:服を着て踊りの石像の効果が届かない場所へ 願い:邪悪なものの優勝の阻止】
※踊り状態は短時間で回復するが食事と移動以外の一切の行動はできない。また一切の防衛手段もない。





033<神殿騎士、イズルード>

レーベの村にある、小さいながらも神聖で、落ち着いた雰囲気のある教会。そこにたたずむ一人の青年、神殿騎士イズルード。
「オレは…死んだはず…。どうして…生きているんだ」
魔の者から世界を救うために戦えという、聖アジョラからの導きなのだろうか?
それとも、聖石の力でここに飛ばされたのだろうか?
それとも、あの神と魔王の気まぐれなのか?

彼は、この状況下において、混乱し、落ち着くのに時間がかかった。しかし、願いはすでに決まっていた。
ルカヴィ化した父は倒されたようだが、聖石を持つ者がルカヴィと化してしまうのなら、姉も他の神殿騎士達も危ない。
いや、もう皆すでにルカヴィとなっているのかもしれない。
父を復活させたいという気持ちもあったが、優先すべきはルカヴィの殲滅。そして、とらわれてしまった人達の救出。
必ず優勝せねばならないのだ。

ルールを聞いたところによると、ここ以外にもコースはあるらしい。そして、コース間優勝をすれば、
願い事が増えたり、アイテムがもらえるなど特典があるとか。ならば、目指すのはそれだ。
ゴールは一ヶ所。ならば、その手前で待っていれば、キーアイテムを持った相手が何人もやってくるのは目に見えている。
初めに来た参加者からキーアイテムを奪えば、このコースでの一位は確実。少なくとも、失格になる可能性は低いはず。
頭上から襲いかかれば、奪うことも難しくはないだろう。
肝心の支給品は…鋭くとがった不思議な剣。試しに振ってみると、衝撃波が走り、目の前の扉に傷ができた。
「なるほど。こいつは、なかなかいいものじゃないか」
説明書によると、ストレイトソードというらしい。これなら、有利に戦いをすすめられるだろう。
少し時間を使ってしまったが、敵が本格的に動くのはキーアイテム発表からだ。
それまでにいざないの洞窟とやらにたどり着けばいい。
教会で祈り、そして計画をまとめ、彼は動き出した。

【イズルード 現在位置:レーベの村の教会 所持品:ストレイトソード
 行動方針:いざないの洞窟で待ち伏せ 願い1:ルカヴィの殲滅 願い2:父を蘇らせる】





034<単純な願い事>

モンバーバラの踊り子マーニャ。彼女の願い事は至って単純であった。

「えーっと…、まずお金でしょ、宝石にいいお酒でしょ、それに周りにはいい男どもを侍らせて…
(*´Д`)ハァハァ━━━ハァハァハァ(´Д`*≡(´Д`*≡*´Д`)≡*´Д`)ハァハァハァ━━━━!!!」

彼女の頭の中には、既に彼女の彼女による彼女のための王国の未来予想図が描かれている。
欲望のためには、人間努力を惜しまない物、彼女もそういったタイプの人間であった。
そんな彼女の支給品は、どうやら爆弾のようなものであった。
「なになに…。『憎いアイツを死なない程度に半殺し!3個パックでさらにお得!』ねぇ…。
 まあこのレースにはちょうどいいわね。」
ハーフデッドボム。相手の体力をちょうど半分ほど削り取るという爆弾らしい。
殺人禁止のルールでは有効に使えるだろう。

「とはいえ一人じゃ心細いわね…。全くミネアったら、姉である私を置いてどこほっつき歩いてるのかしら?」
野望達成のためには僕が必要だ。ミネアがいないならそのへんの男を捕まえればいいじゃない。
色仕掛けなど、踊り子である彼女にとっては朝飯前である。

「うふふ…まあこの私の美貌にかかれば、男どもなんてイ・チ・コ・ロよねぇ〜キャハハッ」
高笑いのマーニャは獲物を待ちかまえるハンターのように木陰へと身を隠した。

綺麗なお姉さんには棘がある。間違いない、気を付けろ!

【マーニャ 現在位置:いざないの洞窟北西の森 所持品:ハーフデッドボム×3 
 行動方針:ミネアorしもべを見つける 願い:マーニャ王国の建設】





035<雅な扇子>

「とりあえず、こんなところか」

振り返るセージの目の前には、氷の地面が広がっていた。
森へと進む道が氷と化し、とてもじゃないが一筋縄では進めない状態になっている。

「素晴らしいよね、マヒャドって」

誰に行っているわけでもなくそう呟くと、彼はあることを思い出した。
そして急いでふくろを開いた。

そう、そのふくろは支給品袋である。
彼はついつい開けることを忘れていたのであった。

「あたりかはずれか…いざ!」

そして袋の中のものをしっかりと掴み、手を振り上げるように取り出した。
彼の手には、 た  だ  の  扇  子  が 握られていた………。

「ま…まぁ、最近暑いし……ね。うん、大丈夫大丈夫。それにコレを振りながらバギクロス使ったら雅っぽくていいし、うん。」

無理矢理支給品の存在意義を作った彼は、急いで森へと姿を消していった。
支給品のショボさを確認し、流石に余裕がなくなったらしい。

【セージ 現在位置:アリアハン近くの森の中 所持品:扇子
 行動方針:森の中で、キーアイテムの入手を図る&呪文で敵の邪魔 願い:この世界(DQ)と異世界(FF)に存在する全ての呪文を習得する】





036<無の力を>

「ファファファ…」
「何でも願いを叶えるか…、面白い!
 ならば私に完全な無の力を与えて貰おうではないか」

一人笑う白いカブトムシ。否、暗黒魔道士エクスデス。
参加者の中でも最強クラスの実力を誇る、優勝候補の一角である。

袋の中に入っていた支給品は「イブールの本」
はっきり言ってハズレアイテム。表紙を3秒眺めた後、袋の中に入れたまま。
おそらく今後読むことは無いであろう。
かわりに地図を片手に、いざないの洞窟に向かって歩き続けていた。
キーアイテム探しは行わず、他の参加者から奪う考えなのだろう。

洞窟のある湖まで近づいたところで足を止める。
「ファファファ…。丁度いい、ここで待たせてもらうとするか」
いざないの洞窟の手前には祠があり、ゴールへ向かう者は必ずココを通過する。
祠へ入り、エクスデスは布団に腰掛けて参加者を待つことにした。

【エクスデス 現在位置:いざないの洞窟手前の祠 所持品:イブールの本
 行動方針:祠に立ち寄った参加者からキーアイテムを奪う  願い:「無」の力を得る】





037<お兄ちゃん>

明らかに中にやばい奴がいる。
しにがみの指輪の力で壁に顔を突っ込んで様子を伺う。
「どうする?ロック?」
「どうするもこうするもここを離れるしかないだろう?」
セリスがちょっと祠を離れてロックが寛ごうかなと思った矢先の来訪者。
エクスデス。
明らかに異質な気を感じ、思わずそのまま体力の浪費をいとわず壁をすり抜けて脱出。
先にセリスが外に出ていたから幸いだった。
殺人は禁止されていても動けなくなるくらい怪我すればこのレースで勝つことは無理だ。
「…」
「…」
他の気配を感じる。
「気付いているよな?」
「ええ。」
ゆっくりと近づく。
そして。
「誰だ?」
誰かがいるだろう草を分ける。…そこには。
「く、来るな…!」
今にも泣きだしそうな女の子がいた。
ロックたち少しばかり困惑。
少しばかりなんとなく気まずい空気。
そして、堰を切ったように…
「わあああ、ここで泣かれると困るっ!セリス!手伝えっ!」
「え、ど、どうすれば!」
中にはやばいエクスデスがいる。
泣かれたら絶対にバレる。下手したらもうバレている。
「一旦ここから離れるぞ!」



「落ち着いたか?」
女の子はこくんと首を縦に振る。
あれから女の子は泣くだけ泣いた。
女の子を抱えて一気に南へ。海岸までやってきた。ここなら万一誰かがきてもこっちも気付くだろう。
「そう、サンチって言うのね。」
「俺はロック、こっちはセリス。」
とりあえずここはセリスに少し任せる。
下手に自分がでて余計泣かれるのもなんか罪悪感。
それよりかは同じ女性であるセリスに任せるほうがいいだろう。
まずは一手ってとこか?
サンチは本来気は強い性格ではあるのだけど、いきなり家族と離れ離れにされて、その上知り合いも全くいない。とどめに全く知らない土地。
小さな子供にとっては酷な物だ。
ふと彼女のデイバックに目をやった。手をつけた後はあるが再びしまったものだろう。
小さな子供には扱えない代物と判断する。
「中、見ていいか?」
またこくりと首を振る。
「げっ…まさか。これ。」
「何?」

ロックが取り出したそれを見てセリスもぎょっとする。
サンチのデイバックから出てきたのは伝説の聖剣、ライトブリンガーだ。
威力だけなら恐らく無二の聖剣だ。
だが、威力がありすぎるのも問題だ、強力すぎる威力は人を容易に殺めてしまう。
さらにこれは使用者の意思とは関係無しに時折「ホーリー」を発動させてしまう。
一般人が巻き込まれたら即死は免れない。
「過ぎたるは及ばざるが如し、ね。」
「第一子供に支給されるもんじゃないだろう…」
はぁ、と溜息をつく、何考えてるんだ?神様は。
「それ、お兄ちゃんにあげるよ…重すぎるし…」
とりあえず、おじさんと呼ばれてはいないということに少し安堵。見た目が若いからか?
「そうか、もう少しここにいようか?」
サンチがこくりと頷く。
──まあ、こういうのも悪くはないよな。

【ロック 現在位置:南東の祠から南に行った海岸 所持品:しにがみの指輪、ライトブリンガー
 行動方針:海を眺める 願い:ありとあらゆる世界の冒険】
【セリス 現在位置:同上 所持品:祝福の杖 行動方針:同上 願い:今は無し】
【サンチ 現在位置:同上 所持品:なし 行動方針:同上 願い:とにかく帰りたい】





038<有能な駒>

ダイスダーグは静かに野望に燃えていた。自分が生きていることに疑問は抱いたが、そういうものだと割り切った。
何でも願いをかなえるということはつまり、優勝すれば
イヴァリース全土、いや、ロマンダもオルダリーアも、世界中をベオルブ家の支配下におくことができるということ。
愚弟のせいで一度は挫折してしまったが、ここで優勝すれば何ら問題ない。
問題は、どうすれば優勝できるか、である。

コース間優勝なら、支給品の引き寄せの矢20本を持って、ゴール前で待ち伏せれば良い。
だが、同じようなことを考える人間は必ずいる。衝突は避けられまい。また、それでは長期戦には向かないのだ。
長期戦では、初めの準備が肝心だ。ピンチを切り抜けられるように様々な選択肢を作らねばならない。

仮に待ち伏せ作戦をとったとしよう。
初めのうちは子供や、気の弱そうな者も来るので脱落はしまい。
だが、参加者の中には屈強な戦士、いかにも賢者といった男、山のような巨人、しまいには破壊神までいる。
それらはかなりの確率でラストステージまで残るだろう。ガチンコ勝負で勝つのは厳しい。
それに、一般人でも群れたら厄介である。
また、ゴール地点を常に監視しておかねばならないから、アイテム調達も駒作りもできない。
途中で方針を変えても手遅れになってしまうだろう。
一人で十分強いなら良いが、自分では待ち伏せには限界があるのだ。

まずは単純そうな者、または正義感の強そうな者を探し出し、信用を勝ち取らねばならない。
そして、強敵やアルマ、弟の仲間といった面々は早い内に始末しておく。
そんなわけで、下準備のため人のいそうなアリアハンへやってきたダイスダーグであった。
目についたのは大きな酒場。あそこなら人が集まっているとふんで、そこに向かった。



「ヘルジャスティス様ははお亡くなりになるし、ポポロ様からは解雇されてしまうし、
 ああ、私は一体どうすれば良いのでしょうか…」

彼女はミリア。種族は使い魔。上級魔族が雑用を担当させるために作り出した悪魔の一種である。
故に、どんなに能力があっても一人では生きることには耐えられず、その内存在自体が消えてしまうのだ。
これまで存在が消えなかったのは、「不思議のダンジョン」にいたからである。
元々はヘルジャスティスに呼び出されたのだが、復活したとたんに倒されてしまった。
その後、雇い主を探していたが、ポポロという少年にひかれて、そのまま召使いとなった。
彼は、初めのうちは使ってくれたのだが、そのうちサンドラや、ガイルや、あやかといった面々が
仲間に加わってくると、出番が全く無くなってしまった。毎日暇だった。

メイドとして仕事をしようにも、母親のネネがほとんど一人で家事はするし、
おまけにマリーナという王宮仕えのメイドまで派遣される始末。
彼女自身は決して無能ではないが、はっきり言って、仕事自体が無いのである。

そして、解雇通告までされてしまった。仲間の整理兼解放らしい。彼女にとって死亡通告以外の何者でもなかった。
そんな時にこのレース。目的はすでに決定していた。新たな主人を見つけ、尽くすことである。
自立という言葉は彼女の辞書に無いらしい。

ここはルイーダの酒場。冒険者達の出会いと別れの酒場である。
といっても人はいない。ここを出て、主君を探しに外へ行こうとした矢先のことだ。
一人の男が入ってきた。ヒゲや髪は曲がっているが、高貴な身なりをしており、いかにも貴族といった感じの男。
ここに来て初めて出会った人間。思い切って声をかけてみる。

「私を雇っていただけませんか?」



「私を雇っていただけませんか?」
酒場に入ったとたんに青い小さなモンスターにこう言われた。
自身が異形になった経験が記憶に残っているからか、姿に驚きはしなかったが、一人しか優勝できないレースで何を…と思う。
この状況下で初対面の相手に突然雇って下さいは無いだろう。こういう輩には必ず裏があるはずである。
「一体どういうことかね?」
「私は使い魔でございます。故に常に誰かに仕えなければ、その内私自身が消えてしまいます」
「主人はいないのかね?」
「このレースには参加しておりませんし、解雇されてしまいました」
「では、その解雇されるような者を雇って、私にどんなメリットがあるのだね?」
「…少なくとも、あなた様の捨て駒程度にはなれましょう」

さすがにこの発言には驚いたが、質問を続ける。知り合いの数、願い、特技などを聞いてみる。
知り合いも結構いるらしい。また、願いは主人を探すことだという。そして、何より盗みが得意だという。
もしこのモンスターが本心から仕えたいと考えているのであれば、かなり有能な駒となるだろう。
すでに誰かに仕えているのだとしても、当分は有効活用ができるのではないか?

「いいだろう。お前を雇うことにしよう。ただし、少しでも命令に背いたらすぐに私のもとから離れてもらう。いいな?」
「ありがとうございます。ご主人様。この命、ご主人様のために」
「挨拶はよい。盗みが得意だといったな。ならば…窓の外に銀髪の剣士が見えよう?腰に提げてある剣を奪ってきてもらおうか」
「了解致しました。必ずご主人様の期待におこたえ致します。」
ミリアは支給品の入った袋をダイスダーグに渡し、銀髪の剣士、セシルの方へ向かっていった。
ダイスダーグはその剣が欲しいのではない。むしろミリアの忠誠心と能力をためすための、いわばテストなのだ。
「さて、お手並み拝見と行こうか…」
ワインを持ち、ダイスダーグは窓辺に立った。

【ダイスダーグ 現在位置:ルイーダの酒場 所持品:引き寄せの矢20本、? 行動方針:手駒とアイテムを集める 願い:世界の支配】
【ミリア 現在位置:ルイーダの酒場入り口 所持品:無し
 行動方針:ダイスダーグに尽くす、セシルからアイスソードを奪い取る 願い:?】





039<魂>

「俺は絶対に世界一の魔導師になってやるんだ!」
それが、彼の口癖だった。
汚れを知らない、若者特有の純真さを以て彼は魔法の研究に打ち込んだ。
その熱意は並々ならぬものであり、また留まることを知らなかった。
同じ志を持って、師匠の元で魔法の研究をしていた者は皆、お互いを家族のように考えていた。
それぞれが義兄弟の契りを結び、もはや本当の家族といっても過言では無かった。あの日までは…

「師匠、しっかりして下さい!」
「まだ死なないで!」
ベッドに横たわる年老いた男。そのそばに男と女が一人ずつ。
「お前達、何をそれほど悲しんでおるのだ…?死は終わりでは無い。魂は不滅なのだ。
 転生することだってできる。またいつか会えるわ。…ところで、ザンデはどこにおる?」
年老いた男は落ち着いた口調で問う。
「あいつは…数週間前から自分の部屋に閉じこもったまま、呼びに行っても出てこないのです。
 師匠の容態が危ないというのに、魔法の研究をしているとは、何という不孝者か!」
弟子の男は半ばあきれたように答える。
「よいよい、その方があいつらしいわ。
 っ…そろそろか。よいか、私はこれから大きな魂と一つになる…行かなくてはならないのだ。
 ドーガ、ウネよ、ザンデと共に、後はよろしく頼むぞ…」

扉が開く。若い男が飛び込んでくる。
「師匠!遂に完成しました!相手の能力を解析できる白まほ…師匠?師匠!」
その日、ダルグ大陸は大雨に見舞われていた。

白くて羽の生えた小さな生物、モーグリが言う。
「ノア様の遺言によりますと
 ドーガ様にはノア様の魔力が遺産として与えられます。魔法陣の洞窟までお越し下さい。
 ウネ様には夢の世界が与えられます。サロニアの南のフィヨルド地帯の祠までお越し下さい。
 ザンデ様には人としての命が与えられます。よってノア様の洞窟までお越し下さい。
遺産分配は以上です。そして、ノア様より皆様に…」
「おい!それだけか!?師匠が俺に残した物は本当にそれだけなのか!?」
「はい、遺産に関してはこれだけです」
「…人間としての命だと…?師匠が俺をどう思っていたのかよく分かったよ…。こんなゴミを掴まされるなんてな!」
「ザンデ!!言い過ぎだぞ!そもそも師匠は…」
「ごちゃごちゃうるさいんだよ!あんただって本当は俺のこと蔑んでたんだろ…?今日限りであんたらとは絶交だ!
 俺をバカにしたことを後悔させてやる!絶対にあんたらを超える魔導師になってみせる!」
「ザンデ!待て!ザンデ!ザン…」

その後、彼は道を誤り、魔王ザンデとして世界を恐怖に陥れることになるも、光の戦士達に敗れる。
その死に際に召喚した暗闇の雲。本来なら何人もの術者と触媒が必要だ。
光の戦士を触媒に、クリスタルの力を使って計画を実行するつもりだったが、
結局、彼はそれをすべて一人でやってのけてしまった。
結果、彼の魂は雲に食われ、無の空間を永遠に彷徨うことになってしまったのだ。

このレースが終わったら、自分も、ウネも師匠のように大きな魂の一部となるのだろう。
しかし、このままではザンデだけは永遠に苦しみ続ける。
ザンデの魂を無から救い出し、師匠の真意を話し、そして3人でもう一度別の新しい命として暮らしたい。
それが、自分の願い。

【ドーガ 現在位置:ナジミの塔最上階の小部屋 所持品:? 行動方針:? 願い:ザンデの魂を無から救い出し、和解】





040<すれ違い>

あたしはアイリン。今は亡きムーンブルクの王女。
早速だけど、あたしは今凄くピンチだ。助けも来ないのかもしれない。
そう思うと、また流れるはずの無い涙が溢れてきた。


数時間前、あたしはお城の近くの森にいた。
キーアイテムを見つけるという状況ではバッチリな場所だった。
だってここは森の中。この中ならいろいろなものが見つけられるはずだもの。
そしてあたしには呪文も配給品もある。しかも配給品はいいものだった。
その配給品の名前は裁きの杖。
これを振れば魔力を消費せずにバギに似た真空魔法が打てる。
それだけじゃない。杖での戦いはあたしの十八番だ。
だから、絶対このレースはあたしが有利だと思った。

だから少し驕りがあったのかもしれない。

あたしはその配給品をテストを兼ねて使っていた。
森の小さな木々がスパスパと簡単に切れる。道も進みやすくなる。
そしてあたしはそれに陶酔していると、近くの草むらからガサガサと音がした気がした。
だけどあたしは気にも留めずに、ひたすら木を切っていた。

あたしはまだ気付いていなかった。
後ろに人がいたなんて。
そしてその人が、あたしを狙っていたなんて。


数時間後…だけど今より少し前の時間、あたしは目が覚めた。
どうやらラリホーで眠らされたらしい。強制的な睡眠だから、あたまがちょっとだけどガンガンする。
ガンガンの頭で立ち上がろうとしたとき、違和感に気付いた。

瞼が上がらない。睡魔によるものじゃない。
何か目も痛い。どこか怪我したのだろうかと思った。
さらに、腕が動かせない。金縛りにでも遭ったんだろうか、腕が全く動かせなかった。違和感もある。
足もだった。なんだか2箇所ともべとべとした物が巻かれている。粘着質が気持ち悪い。

そして気付いた。あたしは何かで縛られているのだと。
そして恐らく……森のどこかで置き去りに……

そこまで考えると、あたしは怖くなった。
瞼が上がらない、腕や足が動かない。そして助けを呼ぼうと声を張り上げた。
「んッ!んん―――!!」
張り上げたはずだった。筈だったけれど、こんどは口まで開かない。
どうやら、同じようなもので口まで塞がれているみたいだった。声が出せない。

私はもっと怖くなった。
このまま置き去りにされるのかもしれない、このまま餓死してしまうのかもしれない。
もしかしたら、変な趣味を持った気持ち悪い男に襲われるのかもしれない。
「んぐっ…ん…ん―っ……うんうぅ〜〜ッ!!」
あたしは、くぐもった声で泣き続けた。情けないとは思わなかった。思う余裕が無かった。
何かに邪魔されて、涙も思うように流れなかった。

そしてそれから時間の経った今。あたしはまだ置き去りにされていた。
呪文も使えないこの状況が怖い。もうこのレース自体が怖い。
「んむぅ……ん…んん……」
叫ぶ気力も無かった…。




数時間前。
彼は森の中でキーアイテムを探していた。
彼の名はエニクス。このレースの参加者であるハッサンやミレーユの仲間である。

彼が自力で走ってたどり着いたのは森の中。
疲れた体を休め、もう一度走り出そうとしたときのことだった。
何かが高速で迫っている。何か実体の無いものが襲い掛かってきた。
「うわぁッ!」
必死で彼が避けた後、後ろを見ると木々が真っ二つになっていた。
どうやら真空波が襲い掛かってきたらしい。
そして飛んできた元を見ると、一人の少女が杖を持っている。
「あれは裁きの杖……まさか僕に気付いて僕を消そうと!?」
そう思った彼は、気配を殺して少女の元へと向かっていった。

「かといって…こんな支給品じゃなぁ」
彼の支給品はガムテープ。説明書には「まぁダンボールでも纏めときゃいいだろ」と投槍に書かれていた。
「消して武器にはならないけど……僕にはコレがあるさ!」
そういった彼は既に少女に近づいていた。そして背後に陣取り、叫んだ。

「ラリホー!!」



「あまり手荒な事はしたくなかったけど…命を狙うのであれば……ごめん」
彼は倒れている少女を、草むらの中に寝かしながらそういった。
彼は、支給品のガムテープを使って少女を縛っていた。
さらに呪文対策のため、姿を見られないために目隠しと猿轡のように目と口の位置に貼っている。

そして彼は杖を静かに拝借し、この場を去っていったのだった。

【エニクス(DQ6主人公) 現在位置:アリアハン近郊の森の中 所持品:ガムテープ、裁きの杖
 行動方針:PKK(女子供には手加減) 願い:?】

【アイリン(DQ2王女) 現在位置:アリアハン近郊の森の中、草むらの見つかりづらいところに放置される 所持品:無し
 行動方針:気配を感じたらくぐもった声で叫んで助けを呼ぶ 願い:?】





041<にア>

「いよっしゃああああああ!!!」
手に取った剣を掲げて大声でギルガメッシュは叫ぶ。
いざないの洞窟内部に木霊し、かなりうるさい。
「ねんがんのエクスカリバーをてにいれたぞー!」

   :そう かんけいないね
   
にア :気絶させてでも うばいとる
   
   :ゆずってくれ たのむ!!

「何だ?この選択肢は?」
その刹那。背後から迫る恐怖!
「な なにをする きさまらー!」
がすっ。
気配のある方向に振り向いた刹那、腹に突き刺さる衝撃。
ギルガメッシュは倒れこんだ。
「…それはNGだ。」
襲撃者…それは人の姿をしていなかった。
キラースコップ、スコールだ。
スコールの手には愛用のスコップではなく鶴嘴。それも、「決して壊れない」とされる黄金製だ。
振り返るのを待ち、腹部を尖っていないほうで強烈な一撃。
晩成の器の戦闘力は決して侮れない。
ギルガメッシュの体を踏みつけて「エクスカリバー」を手に取る。
「ちっ、それもただの鈍らじゃないか。無駄な時間だったな…。」
人目で見てわかる鈍ら。案の定ギルガメッシュが掴まされたのは偽者のエクスカリパーだった。
エクスカリパーをその辺に放置し立ち去る。
結局ギルガメッシュは気絶させられただけということになった。哀れ。

【ギルガメッシュ(気絶) 所持品:なし 現在位置:いざないの洞窟最深部  行動方針:? 願い:?】
【スコール 所持品:黄金の鶴嘴 現在位置:いざないの洞窟最深部 行動方針:出口へ移動 願い:?】
※黄金の鶴嘴…絶対に壊れない。
※エクスカリパーはその辺に放置。





042<背中の荷物>

「と……所で喋る爪楊枝。」
アトラスはひとしきり歯の掃除を終えてから天空の剣に問いかける。
『だからワシは爪楊枝では無い!』
「お前はキーアイテムか?」
『知るかッ!』
「じ……じゃあキーアイテム、どれ?」
『普通はそれなりに量がある物か或いは複数あるものではないかの?
 少なくともワシの様な貴重品では無いだろう。』
「うが?それ、何処で手に入る?」
『普通にあるアイテムだろうから……街にでも行ってみてはどうじゃ?』
「私もそれが良いと思います。」
『?』
「よし!俺、街行く!」
漸く単眼の巨人は行動を開始した、彼は自分の背中の荷物が増えた事にまだ気付いていなかった……

【アトラス 現在位置:アリアハン西の山岳地帯周辺 所持品:天空の剣 行動方針:? 願い:?】
【あやか 現在位置:アリアハン西の山岳地帯周辺 所持品:? 行動方針:? 願い:?】
※アリアハンに向かって移動開始、あやかはこっそりアトラスの背に乗っています。





043<悩むヘンリー>

「えーと…これはどうするべきなんだ?」

ヘンリーはアリアハンの城の中で恐ろしく悩んでいた。

「これの使い方は…貼るのでいいのか?って、説明書があるじゃないか」

ヘンリーは必死で説明書を呼んだ。
"この札は、念じることにより「敵の攻撃を全て防ぐ」ことが出来ます。ただし効果は1枚につき一回です"
と書かれていた。

「……守りの天蓋…ねぇ……当たりといえば当たりか」

そういうと、そのまま城の外に歩き出した。

【ヘンリー 所持品:守りの天蓋×3 現在位置:アリアハン城玉座付近
 行動方針:出来るだけアイテムを使わないよう慎重に進む 願い:?】





044<モノカ>

「うわぁっ」
「!?」
ファリスの動きはそこで止まった。
前を走っていたマーカスが悲鳴をあげて腕を押さえたからだ。
ファリスはマーカスの背中を追う形でしばらく辺りを彷徨っていた。何が目的だったかは、忘れていた。
とりあえず願い事を走りながらでも考えて、それから後のことを決めようと思っていた。
それが突然、森の奥から電光がとんできてマーカスの近くで弾けたとき、ファリスの思考は止まった。

森の中から美しい音色のような甘美な声が聞こえてくる。
「あんまりにも参加者が多いものだから、早いうちに数を減らそうと思ってね」
木の陰から人が姿を現した。
裸体に布をかぶせただけのような格好をしたクジャだった。
「な、なんッスか。ちょっとあぶねえッス」
マーカスは電光に驚いたのかクジャの身なりに驚いたのかどちらともいえない声を出した。

クジャは視線の先にマーカスを固定した。相手が何を言っているかなどいちいち聞いてはいない。
「この杖、たぶんこうするんだろうね?」
クジャが突如取り出した杖の先端をマーカスに向けて魔力を高めると、彼は自由を失った。
「ぐええっ」
それだけ言い残して、彼はモノと化し、鎧となった。

クジャは残された鎧を着込んでみた。鎧を頭から被せ、腕を通し感触を確める。
攻撃するにしろ逃げるにしろ絶好の機会なのだが、ファリスは目の前で起こった今しがたの光景が信じられ
なくて、何をするでもなく、ただ立ち尽くしていた。


「さてと、あとは君だけど」
クジャがファリスへと視線をうつす。
ファリスは一瞬だけ戦う構えを見せて……逃げ出した。あまりに格が違うと悟ったので。


「まあ、逃げる人を追う趣味はないね」
クジャはそう言い捨て、失格者の荷物を拾い上げ中身を確認した。

【クジャ 現在位置:アリアハン北の橋付近の森 所持品:モノカの杖(残り9回)、神秘の鎧(マーカス変化)
     魔法のランプ(マーカスからルート) 行動方針:参加者の数を減らす  願い:?】
【ファリス 現在位置:アリアハン北の橋付近の森→アリアハン北の橋へ 所持品:?  行動方針:逃げる 願い?】


【マーカス 失格】
※アイテムに変化したキャラは大会終了まで解除されません





045<メイドコンビ>

「…でね、その時パミラ様ったらね…。」
「まあ、私の代のパミラ様も同じようなこと言ってるの聞いたわよ。」

レーベの村の宿屋で和やかに談笑する二人の女性。メイド服の色こそ黒と白と違うが、
その容姿はまるで鏡に映したかのようにそっくりである。

イルマとエルマ。時代は違えど、ともに炎の村エンゴウで占い師パミラに使える助手である。
似たもの同士意気投合した二人は、外の騒ぎなど気にせずすっかり話し込んでいた。

「さてと…。いつまでもこうしていたいけど、そろそろ出発しない?出遅れちゃったみたいだし…。」
「そうね、まずは支給品を確認しましょうか。私のから見てみるわね」
そう言ってエルマが取り出したのは、なにやら古びた一冊の本である。
説明書によると、どうやらとある勇者が記した武芸百般の指南書のようだ。
一方、イルマの支給品は、何の変哲もないロッド。相談の結果、そのままイルマが持つこととなった。

「確認も終わったし、そろそろ…ところで、さっきから外が騒がしくない?」
その時ふたりが窓の外に見たのは、一人の女性とそれを追い回す荒くれだった。

「大変!急いで助けなきゃ!」
ロッドを握りしめイルマが叫ぶ。
「わかったわ、行きましょう、先輩!」
「ふふっ、よろしくね、後輩!」

一人では弱くても二人ならプリキュア。かくして勇敢なメイドコンビは外へ飛び出していく。
しかし彼女たちは知らなかった。荒くれがメイドフェチであることを。

【イルマ 所持品:ロッド 現在位置:レーベの村宿屋入り口  行動方針:メモリアリーフ主人を止める 願い:?】
【エルマ 所持品:アバンの書 現在位置:同上 行動方針:同上 願い:?】






back///next



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送